放物線運動
物体を投げるときに、どの角度で投げればより遠くまで届くかを考えてみます。物
体を投げる角度をθそして初速度をV0として計算します。
鉛直上方をY軸の+方向、 物体が飛んでいく水平方向をX軸の+方向として物体
の放物線運動を式で表すと、
X方向: X=( V0 COSθ) t
Y方向: Y=( V0 SINθ) t −G t2 / 2
ここで、物体の初期位置は座標の原点(0、0)とし、またGは重力加速度です。
次に、上記の式を微分して速度を求めます。
X方向: VX=V0 COSθ
Y方向: VY=V0 SINθ−G t
よって、物体が最高点に達する時間 tpで VY=0 となるから、
tp=( V0 SINθ)/ G
これより、地上から物体を投げ上げて再び物体が地上に戻ってくる時間 tl は、
tl=2 tp
したがって、物体の水平方向の到達距離は上記の時間 tl に水平方向の速さをか
けたものになります。
Xl=( 2 V02 SINθCOSθ)/ G=( V02 SIN 2θ)/ G
以上から、θが45度の時 Xlが最大値 V02/ G を取ることが判ります。
具体的に例をあげて説明します。 物体の初速度を10 m/s とし、投げ上げる角度
を30度、45度、60度と変えたときの放物線を示します (図1参照、Functionvi
ewで作成)。
上の図から判るように、 角度が45度のとき一番遠くまで物体が飛んでいることが
見てとれます(X軸との交点から約10 m 飛んでいることが判ります)。
では、 空気抵抗の影響を考慮した場合は角度や最高到達距離はどうなるでしょう
か。放物線運動の微分方程式に戻って考えてみます。
空気抵抗下の運動で議論したように、一般の人がボールを投げる程度ならボール
の速さは空気分子の速さに比較してかなり遅くなるため、 空気抵抗の項はボー
ルの速さに単純に比例すると考えて問題はありません。
ここでは、 運動方程式(微分方程式)をベクトルではなく、スカラーで表示します。
X方向: md2X/ dt2=−rdX/ dt
Y方向: md2Y/ dt2=−rdY/ dt−mG
上記の式を、速度を使って表すと、
X方向: mdVX/ dt=−rVX
Y方向: mdVY/ dt=−rVY−mG
となります。 VXとVYに関する初期値( V0 COSθ、V0 SINθ)を使って、上式の解
を求めると、
X方向: VX=V0 COSθ・EXP(−rt/ m)
Y方向: VY=(V0 SINθ+ mG/r)・EXP(−rt/ m)−mG/ r
となります。XとYに関する初期値(0、0)を使って、上式の解をさらに求めると、
X方向: X=−{ mV0 COSθ・EXP(−rt/ m) } / r
+ ( mV0 COSθ) / r
Y方向: Y=− { m(V0 SINθ+ mG/r)・EXP(−rt/ m) } / r
−mGt/ r + m(V0 SINθ+ mG/r) / r
となります。
課題(その1)
t→∞のとき、X方向の位置は( mV0 COSθ)/r に収束します。 このことが本当
に正しいか実験的に確かめてください。
上記の式を解析的に解いて最大値を求めることは難しいと思われるので、 実際に
、数値を代入して軌道を計算してみましょう。
物体を野球の硬式球とします。重さを150g(=0.15kg )、直径が10cm(=0.
1m )とします。r を計算すると、
r=89.3 mairNAUS=89.3X28.8X10−3X281X78.5X10−4
=5.67 kg / s
となります。ただ、硬式球は球形なので上の値よりはかなり小さな r を取ると考え
られます。実験での検証も考慮して、r の値として0.2、0.1そして0.01kg/ sの
三つのケースについてシミュレーションを行います。
r が0.01kg / sの場合について示します(図2参照、Functionviewで作成)。
r が0.1kg / sの場合について示します(図3参照、Functionviewで作成)。
r が0.2 kg / sの場合について示します(図4参照、Functionviewで作成)。
以上の三つのケースの検討から、 空気抵抗がある場合は 45度よりも低い角度
で投げた方がより遠くまで飛ぶと思われます。数度単位で軌道を計算すれば、もっ
と明確に証明できるはずです。 興味ある方はトライしてみてください。
空気抵抗の係数の算出について
実験的に空気抵抗の係数を算出することを考えてみましょう。例えば、野球のボー
ルを自由落下させて落下時間と落下距離の関係をグラフにすれば、係数の値を求
めることができるはずです。
自由落下の場合は初速度を 0 としてY方向のみ考慮すればいい訳で、その式は
以下のようになります。
Y方向: Y=−( m2G )・EXP(−rt/ m) / r2−mGt/ r + m2G/ r2
上記の式に実験データをフィットさせて係数を求めてみてください。 高校レベルの
物理の実験として良いテーマになると思います。もし、上手くフィッティングできなけ
れば、モデルを若干修正する必要が出て来るかもしれません。 それ自体もまた面
白い研究テーマになります。
r をパラメータとして時間に対してYがどのように変化するかを示します ( 図5参照
、Functionviewで作成)。実験をするときの資料にしてください。
空気抵抗の係数の算出でレポートを作成したものを送っていただければ、 当ホー
ムページに掲載させていただきます。ただし優秀なものに限ります。