ベクトル解析
高校レベルで習うベクトル演算は内積程度ですが、その他にも多くの定義された演
算があります。 まずは、復習をする意味で内積の定義から始めましょう。ただし、ベ
クトルは太字のイタリック体で表しています。例えば、ベクトルの成分表示は次のよ
うになります。
A=(AX、AY、AZ)
1.内積
皆さんがご存じのように、内積の定義は以下のようになります。
A ・B=| A |・| B | COSθ=AXBX+AYBY+AZBZ
ここで、 絶対値表示されているベクトルはベクトルの大きさを表し、 XYZの添え字
が付いているAとBは上記で説明したベクトルの成分を表しています。また、θは二
つのベクトルによって挟まれてできる角度です(図1参照)。
上図においては、ベクトルを表すためにアルファベットの上に矢印を付けました。
ベクトルの微分は以下のように定義されます。
dA /dt=(dAX/dt、dAY/dt、dAZ/dt)
したがって、ベクトルの内積の微分は、
d(A・B)/dt=( (dAX/dt)BX+(dBX/dt)AX、(dAY/dt)BY+(dBY/dt)AY
、(dAZ/dt)BZ+(dBZ/dt)AZ )
=( (dAX/dt)BX、(dAY/dt)BY、(dAZ/dt)BZ )
+( AX(dBX/dt)、AY(dBY/dt)、AZ(dBZ/dt) )
=(dA/dt)・B+A・(dB/dt)
となります。
特に、A=B の場合は、
d(A・A)/dt=d(|A |2)/dt=2(dA/dt)・A =2A ・(dA/dt)
となることに注意してください。
2.外積
外積は内積と共に、 ベクトル演算における掛け算に相当するもので、 内積の計算
の結果はスカラーになりますが、外積の計算の結果はベクトルになります。
では、外積の定義を示します(図2参照)。
A X B=( AYBZ−AZBY 、AZBX−AXBZ 、AXBY−AYBX )
また、上のベクトルの大きさは、
| A X B |=| A |・| B | SINθ
となります。 A X B はA とB の両方に対して垂直であることに注意してください。
そして、A X B の向きはA からB に向かってネジを回したときの進む方向となって
います。よって、(A X B )・A =(A X B )・B =0 は容易に類推できます。
ベクトルの外積を使えば、 三角形の面積や六面体の体積をコンパクトな形で表現
できます。以下の三角形の面積Sですが(図3参照)、
S=| A X B | / 2
となります。
また、以下の六面体の体積Vは
V=( A X B )・C
と表現できます(図4参照)。 θ1はA とB の間の挟む角であり、θ2はA X B とC
の間の挟む角です。 上の二つの関係を、 ベクトルの内積や外積の定義にもどって
証明してみてください。
物理でも頻繁に使われる、ベクトルの外積の微分を考えてみます。
d(A X B )/dt
=( (dAY/dt)BZ+(dBZ/dt)AY−(dAZ/dt)BY−(dBY/dt)AZ、
(dAZ/dt)BX+(dBX/dt)AZ−(dAX/dt)BZ−(dBZ/dt)AX、
(dAX/dt)BY+(dBY/dt)AX−(dAY/dt)BX−(dBX/dt)AY )
=( (dAY/dt)BZ−(dAZ/dt)BY+AY(dBZ/dt)−AZ(dBY/dt)、
(dAZ/dt)BX−(dAX/dt)BZ+AZ(dBX/dt)−AX(dBZ/dt)、
(dAX/dt)BY−(dAY/dt)BX+AX(dBY/dt)−AY(dBX/dt) )
=( (dAY/dt)BZ−(dAZ/dt)BY、(dAZ/dt)BX−(dAX/dt)BZ、
(dAX/dt)BY−(dAY/dt)BX )+( AY(dBZ/dt)−AZ(dBY/dt)、
AZ(dBX/dt)−AX(dBZ/dt)、AX(dBY/dt)−AY(dBX/dt) )
=(dA /dt)XB+A X(dB /dt)
が得られます。
外積の微分では A=B のとき計算するまでもなく、
d(A X A )/dt=0 (何故なら、A X A =0 )
となります。