ひもの張力
高校生が物理を学ぶ上で戸惑うのが物理現象の理想化です。 これは複雑な現象
を理想化することで、 扱っている問題を解き易くするという狙いがある為です。 上
記のテーマについて言えば、質量のないひもということになります。
では、 質量のあるひもAと質量のないひもBとではいったい何が違うのでしょうか
。ここで、ひもが伸び縮みしないと仮定して議論を進めます(図1参照)。
まず、ひもAについて運動方程式を立ててみると、
重り1: M1A =T1+F1 (M1A =T1−F1)
ひも: mA =T2+T1 (mA =T2−T1)
重り2: M2A =F2+T2 (M2A =F2−T2)
となります。一方、ひもBについては
重り1: M1A =T1+F1 (M1A =T1−F1)
ひも: 0 =T2+T1 (0 =T2−T1)
重り2: M2A =F2+T2 (M2A =F2−T2)
となります。 ここで、 加速度ベクトルAの向きは成分が+ならば右向きになります(
力のベクトルも同様)。 また、括弧内は大きさに関する式です(左向きには、−を付
けている)。
ひもについての運動方程式を見ていただければ判るように、m=0の場合はT1=
T2となっています。 これは、 ひもが単に重り1と重り2の間で力を伝達しているの
に過ぎないことを示しています。 ただし、 F1とF2とが完全に釣り合っているとき(
加速度が0のとき )には、両者における違いはまったくありません。